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園主コラム

「英語版園主のコラム」はこちら Japanese dedication to providing high quality products

世界一高品質な果物を作れる日本人の国民性

1990年代だったと思いますが、或るリサーチ会社が世界中のあらゆる国、地域に住む一万人の人々にアンケート調査を行いました。調査項目はたった一つの質問でした。「あなたは、何処の国の製品が一般的に最も高品質だと考えますか。」という質問でした。
未だ日米貿易摩擦が続いていた頃だったと思います。日本のバブル経済が崩壊して間もない頃でした。世界中の国や地域から其々回答を集計するのですが、日本人からの回答は、日本製が一番良いというものでした。そして、世界中からの総合評価も「Made in Japan」でした。しかし、アメリカからの回答は「Made in U.S.A.」でした。昔から良く言われていますが、アメリカ人は現実を直視することが出来ずに、何事に対しても自分達の国が一番優れていると盲信しています。一般的には、アジアでは、隣の韓国を除いた殆どの国々で、Made in Japanが世界中で一番高品質と考えているでしょう。中国でさえ、多くの中国人が日本製品の質の良さを認めています。ヨーロッパはどうかというと、若しかしたら、Made in Germanyという回答が多いかも知れません。しかし、其れは所詮ヨーロッパ限定の回答でしょう。仮にMade in Germanyという結果が出たとしても、其れは日本製品の良さが未だ充分に伝わっていないからだと思います。
さくらんぼ
もも
さて、話を本論に移します。日本では、あらゆるもの作りに於いて、最も大切な事は、数や量では無く高品質であると考えられています。果物の場合も然りです。例えば日本の桃農家が、桃を栽培する方法が根本的に他国の其れと異なっていますが、全て目指すところは「高品質」です。桃に限らず全ての果物に通じていますし、此の事は、果物に限らず、あらゆる日本製品の製造に言える事です。
無数の桃の蕾が各小枝に連なって付いています。一月から二月の間、未だ蕾の大きさは米粒ほどしかありません。此の時期に降る雪や春先の雨から充分水分を吸収し乍、三月中旬頃に成ると、大きさも五、六倍に膨らみます。蕾が十分膨らんだ此の時期に、摘蕾(てきらい)という作業を行います。人間が指先で一本一本の枝に連なっている蕾を間引いて行きます。全て手作業です。此の時期に約60~70%の蕾を間引いてしまいます。蕾は其々の枝に連なって付いているのですが、上向きの蕾は全て落とします。そして、根元に近い部分の蕾も全て落とします。想像してみて下さい。蕾というのは、謂わば、やがては大きい果実に育っていく赤ちゃんということです。其のまま、何も手を加えずにいた場合には、小さな無数の桃が誕生します。養分は葉から吸収しますが、数が多い分だけ、養分も分散化してしまいます。早くから、数を間引く事で、優秀な蕾だけ残し、其の蕾に出来る限りの養分を与えるのです。
上向きの蕾は上向きの桃に成ります。其れは、安定性に欠けますし、風雨にも晒されます。枝の下に付く蕾であれば、成長過程で、安定性もありますし、枝が守ってくれます。また、養分というのは枝先に向かって動きますから、根元の実というのは、一般的に美味しくはありません。主枝であれ、小枝であれ、其れは同じことです。ですから、そういう部分に付いている蕾は早い段階で、間引いてしまいます。
摘蕾
摘蕾
四月に入ると、桃だけでなく、あらゆる果実の開花が始まります。山梨は桃の生産量は日本一ですが、山梨県には、此処南アルプス市、山梨市、一宮町、御坂町等の桃の産地があります。四月中旬にはこれ等の桃の産地は一面ピンク色の景色に様変わりします。正に桃源郷です。ところが、此の果樹の開花期には果樹農家は大忙しです。桃を初め、プラム、梨、さくらんぼ、りんご等の花に人工授粉を行います。四月は、果実栽培で最も重要な月でもあります。四月の天候、つまり、気温を含め四月の気象状況が豊作か不作かを左右するのです。
一部の品種を除き、全ての果樹に対して開花期に人工授粉を行います。此処で言う、一部の品種というのは、「自家受粉」の場合です。一部の桃以外の場合、さくらんぼ、李、梨、りんご、ネクタリン、プルーン等には全て人工授粉を行います。先に話した、「摘蕾」もそうですが、此の人工授粉も、実施しているのは日本だけです。一部の作物に対して、一部の人達が、海外でもやっているという話を聞いたことはあります。しかし、日本では、現在、北海道から沖縄まで、殆どあらゆる果樹に対して実施しているでしょう。日本では、果実栽培に於いて、人工授粉は必要不可欠なものと位置付けられています。既に半世紀以上も前から行われています。「他家授粉」を野生の昆虫や風の力だけでなく、養蜂業者から借りる蜜蜂たちだけでなく、農家自ら実施しているのです。世界中で日本だけです。こういう所に、日本人の国民性、つまり勤勉で我慢強い国民である故に出来る事なのです。蜜蜂は所詮昆虫です。幾ら蜜蜂の箱を置いても、自分の農園の果樹の為に働くという保証はありません。ところが、人間は一本ずつ、枝を追いながら、果樹に付いている花に対して受精させていきます。人間には昆虫や動物以上に優れた記憶力と知性があります。開花も一度に果樹の花が全て一斉に開花する訳ではありません。従って、開花を追う様に、人間が人工授粉を行い続けるのですが、特にさくらんぼの場合は、受精率が他の果実に比べて極めて低い為、繰り返し一定期間内、すなわち、開花期に実施します。
人工授粉を終えた後、数が多過ぎる花を間引いていきます。此の時点で、最初の蕾の時点から見ると、花の数は半分以下になります。
やがて、五月に入りますと、四月に実施した人工授粉の結果が現れます。つまり、果実が誕生するのです。未だ、実が小さい此の時期に「摘果(てっか)」という作業を行います。最初に蕾で間引き、次に花で間引き、そして今度は実で間引いて行きます。「摘果」は大凡、三段階位に、何度も繰り返し、そして少しずつ果実の成長を見ながら、実施して行きます。収穫期を迎える、最終段階直前迄行います。つまり、蕾の段階で、100%から、30%に、花の段階で、15%に、実の段階で、10%に、5%に、そして最後に2%へと数を減らして行きます。いろんな自然からの被害のリスクを避ける為に、徐々に間引いて行きます。勿論、桃だけに限らず、李、ブドウ、ネクタリン、リンゴ、柿等全ての果実に対して間引いて行きます。最終的には、一枝に一個の桃を残します。枝の長さにも拠りますが、長い枝であれば、二個または三個残して行きます。そして、実がある程度の大きさに成長した段階で、二重袋を全ての桃に被せて行きます。日本の果樹農業では、さくらんぼの様な小さな実を除いて、殆ど全ての果実に対して「袋掛け」を行います。袋を被せる事に拠って、風雨から実を守り、着色効果を高めます。次に、収穫期が近付くと、各樹の下に「反射マルチ」という特殊な銀色または白色のシートを敷いて行きます。勿論。あらゆる果実に対して実施します。此のシートを果樹の下に敷く事に拠って、日光を下からも吸収し、果実の成熟を早め、着色を高める事が出来ます。そして、収穫期直前になると、一個ずつ被せて行った二重袋の外袋を外して行きます。
作物をつくる際に、必要な要素は三つあります。土と水と光です。其の作物づくりに土壌が適しているかどうかが、先ず、最初に必要な条件です。次に、十分な水が得られるかどうかです。そして、最後に光を十分に充ててやることに拠って甘く美味しい、果物が出来上がります。此の光ですが、山林の木々は光が十分入らない場合、枯れてしまいます。果樹もそうですが、自然に任せた場合、枝は全てほぼ、直立して成長を続けます。従って、枝と枝との間の間隔が非常に短くなってしまい、更に、小枝が生えて来る為に、光が殆ど入らなくなってしまいます。甘く、美味しい果実は誕生しません。
其処で、人間が、意図的に、果樹が若木の時点で、二三年生の時期に、「誘引く(ゆういん)」という作業を行います。主枝以外の周囲の枝を45度位の角度に引っ張り、一年間位、其のままにしておきます。やがて、一年位経つと、紐を解いても、枝は横に伸びて成長し続けて行きます。こうすることで、光が、果樹の奥深い所迄、十分入って行ける状態に変わります。一個一個の果実に充分に、光をまんべんなく充てる様になります。

蕾の段階から計算すると、全体の98%を間引いてしまうのですから、かなり大玉の、そして、美味しい果物が誕生します。残された、僅かな果実に樹全体の養分が集中します。若木の段階で、「誘引」作業をして充分採光が行われている果樹から採れる実は甘みも十分あります。ところが、「誘引」に拠って直立では無く、やや斜め横に伸びて行く枝に、かなりの大玉の果実が生るのですから、果実の重みに因って各枝が折れ易くなってしまうという弱点が生じます。此れは桃に限らず、他の果樹でも同じです。
其処で、農家の方達は、果実の重みで枝が折れる前に枝支柱という鉄のポールを各枝の下に取り付け、枝が折れるのを予防します。此の方法以外に、樹木全体を、太いしっかりした鉄の柱を主枝の直ぐ隣に立てて、太い枝を一本ずつ強い針金を付けて中央の柱に引っ張らせることに拠って、枝が折れるのを防ぐ方法もあります。此の鉄柱を「帆柱(ほばしら)」と呼びます。まるで、船の中心に帆を立てる為の柱に似ているからでしょう。
フルーツ狩り
フルーツ狩り
ごく簡単に、春先の蕾の時期から夏の収穫期迄の流れに付いて記載しましたが、摘蕾、人工授粉、摘花、摘果、マルチ敷き、枝支柱立て等どれも日本だけが行っている 作業だと思います。世界一高品質な果物作りは日本人だからこそ出来るのです。すなわち、勤勉で(diligent)、忍耐強く(patient)、創造的 (creative)で、繊細な(delicate)うえに正確な(precise)感性を持った国民性が成せる技です。いろんな点に於いて、日本人は 世界一優秀な国民です。其の優秀な日本人が、農業の分野に於いても世界の他の国々や地域では見られない、ものづくりを行っています。全ては高品質を目指し て生まれて行った技です。

中込農園
園主 中込一正(共同代表)
2014年12月13日

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