高度経済成長の終焉と転換点
1960年代以降、日本は目覚ましい高度経済成長を遂げ、企業活動や消費の拡大を背景に、国全体が右肩上がりの発展を続けてきました。その勢いは長らく陰りを見せることなく、人々の生活水準は向上し、「豊かさ」が当たり前のものとして実感される時代が続いていました。しかし、その流れに大きな転機が訪れたのが1990年です。この年を境に、それまで順調に伸び続けていた経済は減速し、やがてバブル崩壊という形で日本社会に深い影を落とすことになります。
バブル崩壊がもたらした“パンドラの箱”
バブル崩壊は、単なる景気の後退という一言では片付けられない出来事でした。むしろ、それは長らく覆い隠されてきたさまざまな社会問題の「蓋」を開ける契機となりました。いわばパンドラの箱が開かれたかのように、その内部から次々と顕在化してきたのが、少子化や高齢化、空き家の増加、耕作放棄地の拡大、そして慢性的な労働力不足といった課題です。これらは、バブル期の繁栄の裏で見えにくくなっていたものの、確実に進行していた問題でもありました。
再生への模索と観光への着目
こうした現実を前にして、政府関係者や政策担当者たちは、日本を再び活気ある国へと再生させるための方策を模索し始めます。その議論の中で注目されたのが、「観光」という分野でした。世界に目を向けると、いわゆる主要国の中で、日本は外国人観光客の受け入れ数が極めて少ない国であることが明らかになりました。文化、自然、食、四季といった豊富な観光資源を持ちながら、その魅力が十分に国際的に発信されていなかったのです。



Visit Japan Campaignの始動
この状況を打開するために、政府は2003年に「Visit Japan Campaign(ビジット・ジャパン・キャンペーン)」を開始しました。これは、日本の魅力を海外へ積極的に発信し、外国人観光客を呼び込むことを目的とした国家的プロジェクトです。この取り組みは、日本が初めて本格的に「観光立国」としての方向性を打ち出した象徴的な出来事でもありました。それまで製造業中心の経済構造に依存してきた日本にとって、観光という新たな成長分野を開拓する挑戦でもあったのです。

観光庁の設置と国家戦略化
さらに2008年には、国土交通省の中に観光庁が設置され、観光政策はより体系的かつ戦略的に推進される体制が整えられました。これにより、外国人観光客の誘致は単発的な施策ではなく、継続的に取り組むべき国家戦略として位置付けられるようになります。インフラ整備や情報発信、多言語対応の強化など、受け入れ環境の整備も本格化し、観光の質そのものが問われる時代へと移行していきました。
ブランド・ガイドブックが示す方向性
そして2014年、観光庁は訪日外国人観光客のさらなる誘客を推進するための指針として「ブランド・ガイドブック」を策定しました。このガイドブックは、日本の魅力を象徴的に体現する事例を提示し、観光地づくりの方向性を示す重要な役割を担っています。選定されたのは、ニセコリゾート、星野リゾート、JR九州、日光江戸村、飛騨高山、そして中込農園といった、多様な地域資源や独自性を活かした取り組みを行う事業者・地域でした。
(Web掲載版ブランドガイドブック)
(Web掲載版ブランドガイドブック)
中込農園に見る“地域発・観光革命”

ここで特筆すべき存在が、私たち中込農園です。ニセコや星野リゾートのような大型観光地が注目される一方で、中込農園は一見すると小規模な農業事業者に過ぎません。しかし、その取り組みは日本観光の未来を示す象徴的なモデルと言えるでしょう。
中込農園は、単に農産物を生産・販売する場ではなく、「農業体験」を軸とした観光コンテンツを提供することで、訪れる人々に新しい価値を提供しています。果物狩りや収穫体験といったシンプルな体験であっても、そこには日本の農文化や季節感、人との温かな交流が凝縮されており、訪日外国人にとっては“日本らしさ”そのものを体感できる貴重な機会となっています。
特に重要なのは、私たち中込農園のような存在が、これまで課題とされてきた耕作放棄地や地方の衰退といった問題に対して、観光という視点から新たな可能性を提示している点です。つまり「農業 × 観光」という組み合わせが、地域経済の再生や持続的な発展につながる実践例となっているのです。このような草の根型の取り組みが国家戦略の中に位置付けられていること自体、日本の観光政策の成熟を物語っています。
中込農園は、単に農産物を生産・販売する場ではなく、「農業体験」を軸とした観光コンテンツを提供することで、訪れる人々に新しい価値を提供しています。果物狩りや収穫体験といったシンプルな体験であっても、そこには日本の農文化や季節感、人との温かな交流が凝縮されており、訪日外国人にとっては“日本らしさ”そのものを体感できる貴重な機会となっています。
特に重要なのは、私たち中込農園のような存在が、これまで課題とされてきた耕作放棄地や地方の衰退といった問題に対して、観光という視点から新たな可能性を提示している点です。つまり「農業 × 観光」という組み合わせが、地域経済の再生や持続的な発展につながる実践例となっているのです。このような草の根型の取り組みが国家戦略の中に位置付けられていること自体、日本の観光政策の成熟を物語っています。


体験価値が生み出す新しい観光の姿
これらの事例に共通しているのは、単なる観光地としての魅力にとどまらず、「体験価値」や「地域らしさ」を前面に打ち出している点です。とりわけ中込農園は、観光の本質が「消費」から「体験」へと移り変わっていることを端的に示す存在です。訪れる人は商品を買うだけでなく、その土地で過ごす時間や人との交流を通じて深い満足感を得るようになっています。
こうした流れは、観光を通じた地域活性化や持続可能な社会の実現にも直結しています。大規模開発に頼らずとも、地域固有の資源を磨き上げることで世界とつながることができる――その可能性を、中込農園は具体的に示しているのです。
こうした流れは、観光を通じた地域活性化や持続可能な社会の実現にも直結しています。大規模開発に頼らずとも、地域固有の資源を磨き上げることで世界とつながることができる――その可能性を、中込農園は具体的に示しているのです。




観光立国としての未来
高度経済成長の終焉から始まった大きな変化の中で、日本は新たな成長の軸として観光を選びました。その中でも、私たち中込農園のような地域密着型の取り組みは、日本の観光の“次の姿”を象徴する存在となっています。
観光はもはや一部の有名地だけのものではなく、地域一つひとつが主役になり得る時代です。大規模リゾートと並び、ひとつの農園が国家戦略の中で評価される――その事実こそが、日本観光の進化を最も端的に物語っているのではないでしょうか。
中込農園
園主 中込一正(共同代表)
2026年7月1日
観光はもはや一部の有名地だけのものではなく、地域一つひとつが主役になり得る時代です。大規模リゾートと並び、ひとつの農園が国家戦略の中で評価される――その事実こそが、日本観光の進化を最も端的に物語っているのではないでしょうか。
中込農園
園主 中込一正(共同代表)
2026年7月1日

